
エムエスアイコンピュータージャパンは、クリエイター向けノートPC新モデル「Status 14-A10SC-165JP」(以下Prestige 14)を発売した。14型液晶、第10世代Core i7、GeForce GTX 1650 with Max-Q Designを搭載しつつ、13型クラスのコンパクト筐体と約1.29kgの軽さを実現する点が大きな特徴となっている。すでに発売済みで、価格は186,780円。
シンプルながら高級感のある筐体
ではまず、Status 14の外観からチェックしていこう。
MSIのクリエイター向けノートPCは、基本的にシンプルなデザインを採用する例が多い。Status 14についても同様で、筐体色はすっきりとした「ピュアホワイト」となっており、見た目はかなりシンプルだ。しかし、天板側面はダイヤモンドカット加工を施すとともにシルバーを配色し、本体側面にもシルバーのラインを用意することで、シンプルながら高級感も感じられる。
天板はフラットで、こちらもぱっと見はシンプルな印象だが、上部にMSIのゲーミングPCを象徴するドラゴンエンブレムをシルバーで配置している。通常ドラゴンエンブレムはレッドだが、シルバーとすることで全体的なデザイン性を崩しておらず、逆にいいアクセントになっているようにも感じる。
なお、バリエーションモデルとして、筐体色にカーボングレーやローズピンクを採用するモデルもラインナップしている。筐体色にもこだわりたいのであれば、そちらもチェックしてもらいたい。
サイズは319×215×15.9mm(幅×奥行き×高さ)。14型ディスプレイ搭載モデルとしては十分にコンパクトで、数年前の13.3型モバイルノートPCとほぼ同等と考えていい。また重量は公称1.29kg、実測で1,266.5gだった。
軽さを追求したモバイルノートでは、14型クラスで1kgを切る軽さを実現する製品も存在するが、14型で1.3kgを切る重量であれば、十分モバイル用途として競争力がある。なによりPrestige 14は、ディスクリートGPUも搭載しクリエイターをターゲットとした優れた性能を特徴としていることを考えると、この軽さは大きな魅力となるはずだ。
筐体素材にはマグネシウム合金を採用しており、軽さと堅牢性を両立。米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する堅牢性試験もクリアしているとのことで、実際にディスプレイ部や本体をやや強くひねってみても歪みは非常に少なく、十分な堅牢性を実感できる。これなら不安なく持ち歩けるはずだ。
フルHD表示対応の14型液晶を搭載
ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の14型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、十分な広視野角を確保。また、クリエイターをターゲットとしていることもあり、sRGBカバー率100%の広色域表示にも対応。実際にデジカメ写真などを表示してみたが、かなりビビッドで鮮やかな発色が確認できた。また高コントラストで暗い場所から明るい場所まで潰れることなくメリハリのある表示が行なえている点も、クリエイターにとって多いに心強いと感じる。
ディスプレイ表面は非光沢処理となっている。それでも光沢液晶と比べて鮮やかさが失われているとは感じない。もちろん外光の映り込みは最小限に抑えられており、映像処理はもちろん文字入力も快適に行なえる。
なお、上位モデルには4K(3,840×2,160ドット)表示対応の液晶ディスプレイを搭載するものも用意される。高解像度表示が可能なのはもちろん、Adobe RGBカバー率100%を実現している点も大きな特徴となっているため、用途に応じて選択すればいいだろう。
キーボードは一部の配列が気になる
キーボードは、アイソレーションタイプのものを搭載する。主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。ストロークは約1.5mmと薄型ノートPCとして標準的だ。タッチは軽めだが、クリック感はしっかりとしており、打鍵感も良好だ。打鍵時の音は、カチャカチャといった不快な音はほとんどなく、比較的静かな部類に入る。また、標準でキーボードバックライトも搭載するため、暗い場所でも快適にタイピング可能だ。
合わせて、ディスプレイを開くと本体後方が持ち上がり、キーボード面に約5度の角度がつく点も、快適にタイピングが行なえる理由の1つとなっている。
キー配列は、ほぼ標準配列に準拠しているものの、Enterキー付近やスペースキー左右の一部キーは隣のキーと隣接している点が気になる。これは、英語配列のキーボードをベースに日本語配列を実現しているためだが、できればしっかり日本語化してもらいたいと思う。合わせて、Enterキー右にキーを配置する点も少々残念だ。これについては慣れでどうにかなる部分もあるが、やはりEnterキー右側へのキー配置は避けてもらいたいと感じる。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。横に広い、かなり面積の大きなタッチパッドを採用しており、ジェスチャー操作にも対応しているので、操作性は申し分ない。クリエイターをターゲットとしていることを考えると、タッチパッドはそれほど重視されないと思うが、外出時などマウスの利用が難しい場面では、十分に活躍してくれるだろう。もちろん、ワンタッチでタッチパッドの動作をオフにできるため、誤動作の心配もない。
ミドルレンジのクリエイター向けPCとして必要十分な性能を発揮
では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.0.2177」、「3DMark Skilled Version v2.11.6866」、Maxonの「CINEBENCH R20.060」の3種類だ。比較として、日本HPの「Spectre x 360 13 WWANモデル」の結果も掲載する。
Status-14-A10SC-165JP ユーザーシナリオ「バランス」 ファン「自動」 |
Status-14-A10SC-165JP ユーザーシナリオ「高性能」 ファン「Cooler Increase」 |
HP Spectre x 360 13 WWANモデル | |
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CPU | Core i7-10710U(1.10/4.60GHz) | Core i7-1065G7(1.30/3.90GHz) | |
チップセット | ― | ||
ビデオチップ | GeForce GTX 1650 with Max-Q Design | Intel Iris Plus Graphics | |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB | LPDDR4x-3200 SDRAM 16GB | |
ストレージ | 512GB SSD(NVMe/PCIe) | 1TB SSD(PCIe) | |
OS | Home windows 10 House 64bit | Home windows 10 Professional 64bit | |
PCMark 10 | v2.0.2177 | v2.0.2144 | |
PCMark 10 Rating | 4815 | 5421 | 4398 |
Necessities | 8180 | 9192 | 9311 |
App Begin-up Rating | 9895 | 12200 | 12925 |
Video Conferencing Rating | 7258 | 7660 | 8008 |
Internet Shopping Rating | 7624 | 8312 | 7799 |
Productiveness | 6800 | 7197 | 6797 |
Spreadsheets Rating | 8392 | 8747 | 7359 |
Writing Rating | 5510 | 5922 | 6279 |
Digital Content material Creation | 5446 | 6538 | 3648 |
Photograph Enhancing Rating | 5651 | 6186 | 5142 |
Rendering and Visualization Rating | 7850 | 10800 | 2398 |
Video Editting Rating | 3643 | 4184 | 3939 |
CINEBENCH R20.060 | |||
CPU | 1449 | 2045 | 1590 |
CPU (Single Core) | 410 | 418 | 431 |
3DMark Skilled Version | v2.11.6866 | v2.11.6846 | |
Evening Raid | 19436 | 24046 | 9048 |
Graphics Rating | 32840 | 36338 | 9742 |
CPU Rating | 5867 | 8244 | 6446 |
Sky Diver | 18562 | 21755 | 9580 |
Graphics Rating | 24792 | 25497 | 9527 |
Physics Rating | 8378 | 12367 | 9498 |
Mixed rating | 17734 | 22622 | 10136 |
Time Spy | 2881 | 3078 | – |
Graphics Rating | 2780 | 2855 | – |
CPU Rating | 3633 | 5536 | – |
結果を見ると、Ice LakeことCore i7-1065G7搭載の「Spectre x 360 13」に比べて、3Dグラフィックス関連のテストでは大きく上回っているものの、CPU処理が中心のテストでは一部劣っている部分が見られる。CPUのコア数やターボブースト時の動作クロックではPrestige 14のCore i7-10710Uのほうが優れていることを考えると、この結果はやや物足りないという印象だ。
ただ、これは標準設定のままテストを行なったものだ。標準設定では、ユーザーシナリオが「バランス」、空冷ファンが比較的静かに回転する「自動」に設定されており、放熱が追いつかずにCPUやGPUの性能を最大限引き出せていないものと思われる。そこで、専用ユーティリティ「Creator Middle」でユーザーシナリオを「高性能」、ファンの動作モードを最強となる「Cooler Increase」に設定して再度計測してみたところ、スコアが大きく上昇。つまり、これがPrestige 14本来の性能というわけだ。このスコアであれば、クリエイター向けPCとして十分納得できる。
ただし、ファンの動作モードを「Cooler Increase」に設定した場合には、当然ながら動作音がかなり大きくなる。とくに風切り音が一気に大きくなり、かなりうるさく感じてしまう。そのため、普段はファンの動作モードを「自動」に設定しておき、高負荷の作業を行なう場合にのみ動作モードを「Cooler Increase」に切り替えて利用するのがおすすめだ。
続いてバッテリ駆動時間だ。Status 14には容量4,600mAhのリチウムイオンバッテリが搭載され、公称の駆動時間は最大10時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。
それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%、「Creator Middle」はユーザーシナリオを「バランス」、ファン動作モード「自動」に設定し、キーボードバックライトをオフ、無線LANとWWANをいずれも有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Fashionable Workplace」を利用して計測したところ、8時間16分の駆動を確認した。
本格モバイルPCと比べてやや見劣りするのは事実だが、実測でこれだけの駆動時間があれば、通常外出時の利用で不安を感じることはほぼないはずで、大きな不満は感じない。
高性能PCを持ち運びたい人におすすめ
Status 14は、クリエイター向けのミドルレンジノートPCとして十分なスペックを内蔵しつつ、重量1.29kgの小型軽量筐体を実現することで、本格的なモバイルPCとしても十分活用できるノートPCに仕上がっている。キーボードには少々気になる部分もあるが、性能面やディスプレイの発色性能は、プロのクリエイターも納得だろう。
また、モバイルPCでも多少重くてもいいので性能を追求したいと考える人にとっても、魅力的と感じる。合わせて、販売価格が19万円を下回っており、コストパフォーマンスも優秀だ。そのため、クリエイターが仕事に使う十分な性能を備える軽量なPCとしてはもちろん、高性能モバイルPCを探している人など広くおすすめしたい。